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利益だけを追うと企業価値が下がる?マッキンゼーが明かす、長期成長を支える本当の経営指標

  • SHIMA RYOTARO
  • Mar 7
  • 6 min read

多くの経営者が「利益が増えれば株価も上がる」と考えがちですが、実はその成長が自社の価値を壊している可能性があることをご存知でしょうか。世界の投資家が本当に見ているのは、単なる利益の数字ではなく、もっと根本的な「ある指標」とのバランスなのです。



実は、筆者も新卒で外資系投資銀行に入りバリューション(企業価値評価)を学びましたが、それが経営や実際の株価にどう繋がるかはぼんやりとしか分かっていませんでした。当時セルサイドにいたせいもありM&Aありきの価値評価で、グローバル上場企業の経営者が何を重視して経営しているか、世界の公開株投資家が何を見て投資先を決めているのか深く考えていませんでした。



この記事は2026年2月18日にアップされた「How are companies valued?」という記事を元に日本の読者の皆さんに向けて役に立つ情報と考察を書いています。



企業価値を決めるのは「市場の気分」ではない



会社の価値、いわゆる「企業価値」と聞くと、多くの経営者は株価の変動や、ニュースに対する投資家の反応を思い浮かべるかもしれません。しかし、マッキンゼーの専門家たちは、企業価値とは本質的に、その会社がどれだけ長期的にキャッシュ(現金)を生み出せるか、という「選択」の結果であると説いています。



単に今期の利益がいくらだったか、という短期的な数字ではなく、成長のためにどのようにお金を使い、どれだけの効率でリターンを得ているか。その本質を理解することが、日本企業の経営者にとっても極めて重要です。



企業価値を動かす「2つのエンジン」



企業価値を決定づける要素は、実は非常にシンプルです。それは「売上の成長」と「投下資本利益率(ROIC)」の2つです。



投下資本利益率(ROIC:会社が事業のために投じたお金に対して、どれくらい効率的に利益を出せているかを示す指標)は、営業利益を、工場や設備、在庫などの「投じた資本」で割ることで計算されます。



この2つの指標が重要なのは、これらが合わさることで、最終的に会社に残るキャッシュフロー(現金の流れ)が決まるからです。専門家によれば、この2つを軸に据えることで、経営陣は「自社が競合より早く成長しているか」「資本の効率はコストを上回っているか」といった戦略的な議論ができるようになります。



「成長」が価値を壊すという落とし穴



ここが最も驚くべき点かもしれませんが、実は「成長すればするほど、会社の価値が下がる」というケースが存在します。



もし、あなたの会社が事業に投資しているお金のコスト(資金調達にかかるコストなど)よりも、事業から得られる利益の率、つまりROICが低い場合、無理に売上を伸ばそうとすればするほど、会社全体の価値は目減りしていきます。



例えば、利益は出ているものの、そのために膨大な在庫を抱えたり、過剰な工場設備を作ったりしている場合、キャッシュフローが圧迫され、長期的には価値を破壊してしまいます。小売業が店舗を増やしすぎたり、製造業が工場を過剰に建設したりして、利益以上に投資がかさんでしまうケースがこれに当たります。



一方で、すでに高いROICを実現しているIT企業や製薬会社のような企業であれば、さらなる成長に投資することで、飛躍的に企業価値を高めることができます。自社が今、どちらのフェーズにいるのかを見極めることが、経営判断の分かれ目となります。



利益の「額」だけを見るリスク



多くの企業経営者が重視する指標に、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益:本業で稼ぐ力を大まかに示す指標)やEPS(1株当たり利益:会社の利益を株の数で割ったもの)があります。



しかし、これらの指標には「どれだけのお金を使ってその利益を出したか」という、資本効率の視点が欠けています。専門家は、EPSのような指標に固執しすぎると、将来のための投資を控えてしまったり、効率の悪い事業にお金を使い続けたりするリスクがあると警告しています。



実際に、ある企業では「すべての部門で利益を売上より早く伸ばす」という厳しいルールを課した結果、マネージャーたちが「利益率は高いが、成長の余地がある投資案」を次々と見送ってしまい、かつての革新性を失ってしまったという例もあります。



「マルチプル」という比較の罠



「競合他社のPER(株価収益率)やマルチプル(企業価値が利益の何倍かを示す倍率)が高いから、うちは過小評価されている」と不満を持つ経営者は少なくありません。



しかし、冷静に分析してみると、その差には理由があることがほとんどです。高い評価を受けている企業は、より成長性の高い市場にいたり、圧倒的な資本効率を実現していたりします。



単に他社との倍率の差を嘆くのではなく、「なぜ市場はあちらを高く評価しているのか」を客観的に分析し、自社のROICや成長シナリオを投資家に見せていく必要があります。実績が伴えば、市場の評価は自然とついてくるものです。



誰に向かって対話すべきか



最後に、経営者が向き合うべき投資家についてです。市場には、指数の動きに合わせるだけの機械的な投資家もいれば、短期的な売買で利益を狙う人もいます。



しかし、最も大切にすべきは「インテリンシック・インベスター(企業の事業内容や市場の将来性を深く理解し、長期的な視点で投資する本質的な投資家)」です。彼らは、四半期ごとの一時的な利益の増減に一喜一憂しません。構造改革のコストで一時的に利益が下がっても、それが将来のキャッシュフローにつながる納得感があれば、支持を続けてくれます。



彼らのような洗練された投資家と、長期的な価値創造について深い対話を続けることが、経営者にとっての支えとなります。IRを面倒くさいと考える経営者もいますが、数多くの企業を見て分析し、成功している会社とそうでない会社の特徴を常に考えている長期投資家から学べることは多いと思います。



まとめ:経営資源の再配分を恐れない



日本企業がさらに価値を高めるための鍵は、既存の慣習に縛られない「資源の再配分」にあります。



価値を生まない古い事業に慣性で投資し続けるのではなく、成長と高いリターンが見込める分野へ、大胆に資本と人材をシフトすること。追加の資金を投じなくても、今ある資源の使い方を変えるだけで、企業価値は大きく向上する可能性があります。



「利益の額」という数字の呪縛から解き放たれ、資本効率と成長のバランスを見直すこと。それが、これからの時代に求められるグローバル経営のやり方だと思います。




本稿は以下の記事を参考にしつつ、事業戦略の観点から考察したものです。




本テーマが自社の事業戦略にどう影響するか、


ご関心があれば個別に議論可能です。以下の問い合わせページからご連絡ください。






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